奈良・静養院、自然の豊かさと、断食体験の日々 Ⅲ 〜設備と環境〜 | コップのお話 〜体と心と自然の物語〜
 

体験記

奈良・静養院、自然の豊かさと、断食体験の日々 Ⅲ 〜設備と環境〜

 
Glass Story

療養所の設備や周囲の環境について簡単に ─── 。

 

施設のスタッフは、親子のように見える老齢の院長さんと、50代くらいの所長さん。それに柔和な雰囲気の若い女性が一人いる。

長い廊下の真ん中にウォーター・サーバーとポットがひとつずつ置いてあり、その水で空腹を紛らわせることになる。水は生駒山の湧き水だと言う。

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緑に溢れた自然の豊かな環境に、季節も相まって虫の類と遭遇することも多々あった。

ある日、「虫ーーっっ!!」という女性の声が聞こえてきた。

その頃、僕は断食3日目くらいで、自室で仰向けに寝転がり、無気力な眼差しで天井と睨めっこをしていた。おぼろげな意識のなかで、「それはそうだろうな」という思念が棒読みのように流れては消えた。

たぶん、そういう女性も多いのだろう。所長さんの部屋の本棚の下に、幾本かの殺虫スプレーが、準備万端といった様子で並んでいた。

 

また、夜に部屋の灯りをつけたままカーテンを開けておくと、光に誘われた虫が、透明のガラスに飛び込めると勘違いして、勢いよく窓に向かってぶつかってきた。彼らは、パシッと音を立ててぶつかると、慌てて方向転換をして闇に帰っていった。

僕自身、決して虫が得意とは言えないので、一応虫除け対策は用意してきた。でも、断食中は、たとえ虫が現れても不思議と「殺そう」という気持ちは湧いてこなかった。


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もしかしたら、空腹は「自然」に感覚を近づけるのかもしれない。

ある朝のこと、どこから侵入してきたのか、小ぶりな蜂がカーテンと窓のあいだで羽音を震わせていた。僕は、静かに窓を開けて、じいっと出ていくのを待った。

もし出ていってくれないようなら、僕が出ていこうと思った。

そもそも「侵入」はどっちがしたんだよ、という自然の声を感じ取ったような気さえした。

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設備は全体的に古く、さすがに100年の歴史をしみじみと感じさせる風情だった。

階段はぎしぎしと軋み、共用のお風呂場(順番に利用していく)も、決して綺麗とは言えないものだった。ただしトイレだけはウォシュレット付きで割合に清潔だった。

洗濯機と乾燥機は、有料のものが療養所の外に設置されている。庭には、長い物干竿が数本掛かっている。

一方で、部屋にもロープのようなものが掛かっていて、そのロープに洗濯物を干せるようになっているので、僕は、小物類などはお風呂場でさっと手洗いし、室内に干しておくことも多かった。

ただ、普段であれば、もう少し力が入るのだろうけど、断食中は筋肉疲労がひどく、洗ったり絞ったりするのも一苦労だった。

僕が滞在していたのは最安値の部屋だったので、値段がもっと高い部屋には個別にシャワールームも備わっているし、建物自体も新しく、もう少し広々としているのかもしれない。

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仕事の関係で兵庫に住んでいる友人と部屋で会ったり、ケータイの電波も通っていたので電話をすることもできた。

回復食の期間に入ってからは割と遠めの外出も可能で、もちろん自制心は求められるが奈良市内まで観光に行ってもいいようだ。

施設から生駒駅まで下って、生駒駅から電車で20分程度で奈良駅に着く。

ちなみに、療養所から生駒駅までタクシーで数分だが、それ以外の交通手段として、療養所からちょっと坂を下った場所に、動物のデザインのファンシーなケーブル電車(日本初のケーブル電車だと言う)の駅がある。

あるいは、これは平日に限るのだが、ワゴン車を改良したような小さなコミュニティバス(最寄りは門前駐在所)も走っている。

 

たけまる号
たけまる号•路線図 pdf

 

近所の観光地で言うと、外国人観光客も多く訪れ、評価の高い宝山寺も目と鼻の先にある。

また、僕は行っていないのだけど、ケーブル電車で登っていくと生駒山の山頂には遊園地があったり、山頂から眺める夜景がとても綺麗なのだと言う。

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古い設備や自然の多い環境を考えると、僕はときおり一人旅をしたり、漫画喫茶に寝泊まりすることもあったから慣れていると言えば慣れているので平気だったが、正直、女性が一人というのは、もしかしたら不安もあるのかもしれない。

虫とお化け(お化けは出ないけど、雰囲気がどうしても夜の学校みたいだから)は、二大「苦手なもの」という女性も多いだろうから(ただ、断食をしていると、変な話その二つに近づいていく感覚になる。自然や死に親近感が沸く)。

と言っても、GW近辺だったこともあるのか、印象としては女性の滞在客も思っていたよりは多かった。年齢層も幅広い世代に利用されていた。

 

それと、これは男性も含めてだけど、きっと色んな動機や経緯を経て、これまでに色んな人生があって、今この場所にいるんだろうなあと思うと、ほとんど会話をする機会もなかったけど、滞在客とすれ違うたびに感慨深いものがあった。

 

 

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2014-06-10 | Posted in 体験記