精神疾患と窓際族 − 日本でナチスT4作戦が現実化する危険性 | コップのお話
 

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精神疾患と窓際族 − 日本でナチスT4作戦が現実化する危険性

 
Glass Story

縦棒  精神疾患と障害年金のカット

厚生労働省が、精神疾患によって障害年金を取得できる症状の判断基準について、新しい指針を出した。

その結果、これまでケアの対象内だった二級の患者が、症状は変わらないにも関わらず三級に繰り下げられることになると言う。

三級は、年金受給の対象外となる。

減額や支給停止の影響は一割に及び、その数は8万人近くになると予想される。

厚生労働省が来年から導入予定の新しい判定指針について、全国の精神科医でつくる団体が「障害基礎年金を受け取っている精神・知的・発達障害者のうち、1割に当たる約7万9千人が支給停止や支給減額になる恐れがある」との推計を12日までにまとめた。

出典 : 日本経済新聞 『精神障害者ら7.9万人、受給減額・停止も 年金新指針で』

日本で精神疾患の数が増加している理由の一つは、過度な経済成長、経済競争至上主義であることは明らかだ。

勝ったら総取りの過当な競争と、置いてきぼりになったり落っこちたら全て「自己責任」という価値観が、社会全体を覆い、精神疾患になったり体を壊すまで頑張り続けることを強要する。

企業だけでなく個々人にまで蔓延した「偽装」と過剰な「装飾」。闇雲に「コスパ」を求める声。あふれ返る不信と他罰意識。

そして、一人、また一人と置き去りにされていく。

 

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出典 : http://d.hatena.ne.jp/shavetail1

 

こうしてグラフで見ると、単なる無表情な統計に映るかもしれない。

でも、この一ミリ、この一ミクロンに、家族や友人も含めて、一体どれだけの苦痛や悲鳴があり、一体どれだけの孤独な死があったことだろう。

 

この「自分がいつ落ちるか分からない」という不安感と、医療費や障害年金も含めた増え続ける社会保障費を補うために、さらに「一億総活躍だ」と鞭打たれる。

それでもまかなうことが不可能なので、社会保障費を「カット」し、「無駄」を省く。

次第に、日本人全体が、そのことを「論理的」だと思うようになる。

自分たちは死に物狂いで働いている。なぜ自らの弱さゆえに落ちていった連中の面倒を、血税でまかなう必要があるのか。怠けじゃないか、そんなの気のせいだ、自己責任だ、と。

 

 

縦棒  ナチスT4作戦と、日本で現実化する危険性

かつて、このような精神疾患の患者や障害者をガス室に送って「安楽死」させるプロジェクトが、優生学という学問によって「論理的」なお墨付きを受けた時代があった。

ナチス政権下のドイツで実施されたT4作戦である。

精神疾患の患者は、不況に喘ぐ社会にとっては金食い虫であり、また万が一彼らが子孫を残すようなら、劣悪な遺伝子がドイツに残ることになる。

だから、障害者をガス室に送り、人為的に「無駄」を排除していったのだ。

 

日本でもT4作戦が現実化する危険性があるのではないか、という不安の声がある。

でも、日本人は、戦争を推し進めた当事者の言葉に象徴されるように、良くも悪くも、「仕方がない、そういう空気だったんだ」と連呼する、「主体性のない文化」である。

だから、おそらくこの国ではT4作戦のような事態には陥らないのではないか、と僕は想像する。

独裁政権が、自らの主体的な意思で、ガス室行きを命じるようなことはしない。真っ正面から「クビ」を宣告しない。

ただ、じわりじわりと窓際に追い込んで、自分の判断で、この世界を辞めていってもらうだけだ。

 

T4作戦は、この国では現実化しない。現実化しないまま、静かに現実化が進んでいく。

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2016-02-18 | Posted in 社会とビジネス