自分探しの一人旅の意味 − 就活でESが「全然書けない」ときの原因と対策 | コップのお話 〜体と心と自然の物語〜
 

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自分探しの一人旅の意味 − 就活でESが「全然書けない」ときの原因と対策

 
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縦棒  ESが書けないときの原因

先日、ぐったりとした様子で「全然書けない…」というメールが届いた。

何事かと尋ねると、エントリーシート(ES)のことだと言う。

中身に目を通すと、確かに、項目の一つ一つから「全然書けない…」に相応しい混乱と重苦しさが漂ってきた。

就活を迎えて、ESが「全然書けない」「書く内容がない」といったときの原因として、「幾つかの要因が複合的に絡み合っているんだよ」と僕は言った。

その代表的な原因が、以下の三つだ。

 

1、自己の材料不足

材料は自分の過去(どんな浅薄な人生にも必ず深みはある)にあるのに、過去の人生をじっくりと見つめていない。あるいは、材料の整理ができていない。

 

2、相手側の情報不足


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どんな業界なのか、どんな企業なのか、どんな仕事内容なのか。ホームページや関連本、創業者の伝記、Youtubeの動画などで情報を集める。

 

3、ルールに関する情報不足

書きたい素材も、相手の情報もあるのに書けないときというのは、就活、あるいはエントリーシートという空間での振る舞い(言葉遣いやルール)が分かっていない。

 

特に、「1、自己の材料不足」が、「書けない」ことの根本的な原因となっている場合が多い。

 

縦棒  自己分析に必要な「静けさ」

そこで必要なのが、いわゆる「自己分析」である。

この「自己分析」は、たとえばセミナーや就活の対策本では、厖大な量の質問とじっくり向き合うことで〈自分〉を探っていく、といったような方法が一般的だ。

しかし、こうした対策の際の「分析」という言葉には、どこかレントゲンやCTスキャンのように外側から「頭」で論理的に解析する、といったニュアンスがある。

一方、僕が就職活動(そして、その後の長い人生)において重要だと思う方法は、「分析」よりも、むしろ「内観」に近い。

【内観】

①〘仏〙 精神を集中して自分の心を観ずることによって,自己の内部にある真理や自己の真実の姿を知ろうとする瞑想による修行法。観心(かんじん)。
②自己の内面を見つめ,そこにあるものを探求すること。内省。
③〘心〙 〔introspection〕 自分自身の心の動き・状態を自分で観察すること。自己観察。内省。

出典 : weblio辞書「内観」

内観とは、「外側」から〈自分〉を解析するのではなく、心や記憶といった内側に潜り込むことで〈自分〉の原石や素材となりそうな石ころを探すことだ。

 

この内観のために、もっとも必要なものが「静けさ」である。

日々喧騒に追われていると、自分が「何を感じている」のかだけでなく、そもそも「感じているとは何か」を見失っていく。

そこで、この「静けさ」の確保のために、あえて僕は「一人旅」をおすすめしたいと思う。俗に言う、「自分探しの一人旅」である。

数年前のこと、ある中小企業の社長さんと話す機会があった。

その途中、偶然一人旅の話題になって、その社長さんは「自分探しの一人旅」に否定的だと言った。「〈自分〉なんてここにあるんだから、自分探しに一人旅をしたって無駄だよ」。

この社長さんの意見は、ある意味で正しく、ある意味で間違っている。少なくとも今はそう思う。

 

 

縦棒  一人旅をする意味

確かに、彼らの時代には、探すべき〈自分〉はここにあったのだろう。部屋を探せば、割とすぐに見つかった。

しかし、今は時代が違う。

現代社会は、あらゆる〈情報〉で溢れている。

電車内には余白を埋め尽くすように広告が連なっているし、電車を降りると、まもなく駅舎や街のあちこちから欲望を刺激する色や音や匂いや言葉が飛び込んでくる。

たとえ室内に隠れていたとしても、また都市生活でなかったとしても、そこにはテレビ・ショッピングを女優や芸人でコーティングしたような番組や、様々なコマーシャルが流れては消える。

またスマホのゲームやSNSの誘惑など、常に「私を欲望して」と誘ってくる〈情報〉に包囲されている。

この誘惑の喧騒に日々曝されていると、次第に心身の感覚は麻痺し、「自分が一体何を欲望していたのか」ということを忘れる。

モノの溢れた部屋で、すっかり〈自分〉が埋もれてしまっているのだ。

 

だからこそ、「一人旅」が、今とても重要な意味を持ってくるのだ。

この「一人旅」というのは、もちろん実際に旅に出てもいいし、日帰りや近所の散歩も含めて、「一人旅」と呼びたい。

要は、「私を欲望して」と言ってくる〈情報〉から離れるための時間、空間の確保が目的なのだ。

携帯電話の電源を落とし、部屋に置き、公園や河川敷、海など、自然豊かな環境でぼんやりと過ごす。家でも、パソコンやテレビの電源を切り、コンセントも抜く。

こうした時間、空間を、数日(定期的に)確保することも「一人旅」と言える。

逆に言うと、実際に旅に出たとしても、ガイドブックの観光地ばかりをなぞったり、SNSで共有することを前提に風景を眺めていたら、世界の果てでも「一人旅」とは呼べない。

 

 

縦棒  就活対策としての内観の方法

さて、この一人旅によって静けさを確保し、心にゆとりを持てるようになれば、自然と、記憶の世界に潜っていくことができる。

どんなときに悲しかっただろうか。どんなときに悔しかっただろうか。

どんなときにやりがいを感じ、どんなときに心から喜びが溢れただろうか。

不思議と記憶に残っている光景や、小説、映画で胸を打たれたシーンやセリフ、感銘を受けた家族や恩師の言葉は?

その一つ一つの〈石ころ〉を、丁寧に持ち帰ってくる。

 

頭や理性を使って解析したり磨きをかけるのは、こういう石ころを記憶の海から持ち帰ったあとのことなのだ。

もし、就活サイトや締め切りも含めた日々の情報に追われて袋小路にはまっているようなら、急がば回れ、「一人旅」で記憶の海に潜ってみることをおすすめしたいと思う。

芯ができるので、面接で語るときの落ち着きや深みも変わってくるだろう。

 

アイデアのつくり方

アイデアのつくり方 / ジェームズ・W・ヤング 今井茂雄訳

 

つながらない生活 ― 「ネット世間」との距離のとり方

つながらない生活 ― 「ネット世間」との距離のとり方 / ウィリアム・パワーズ 有賀裕子訳

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2016-04-13 | Posted in 社会とビジネス