『マチネの終わりに』 / 平野啓一郎 | コップのお話 〜体と心と自然の物語〜
 

作家の言葉

『マチネの終わりに』 / 平野啓一郎

 
Glass Story

 

生きることと引き替えに、現代人は、際限もないうるささに耐えてる。音ばかりじゃない。映像も、匂いも、味も、ひょっとすると、ぬくもりのようなものでさえも。

何もかもが、我先にと五感に殺到してきては、その存在をめいっぱいがなり立てて主張している。

社会はそれでも飽き足らずに、個人の時間感覚を破裂させてでも、更にもっと詰め込んでくる。堪ったもんじゃない。

人間の疲労。これは、歴史的な、決定的な変化なんじゃないか? 人類は今後、未来永劫、疲れた存在であり続ける。疲労が、人間を他の動物から区別する特徴になる? 

誰もが、機械だの、コンピュータだののテンポに巻き込まれて、五感を喧騒に直接揉みしだかれながら、毎日をフーフー言って生きている。痛ましいほど必死に。

そうしてほとんど、死によってしか齎(もたら)されない完全な静寂。

『マチネの終わりに』平野啓一郎著

 

マチネの終わりに

マチネの終わりに / 平野啓一郎

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2017-01-24 | Posted in 作家の言葉