カフカの目 / フランツ・カフカ | コップのお話
 

作家の言葉

カフカの目 / フランツ・カフカ

Glass Story

 

カフカの目

20世紀初頭のチェコの作家フランツ・カフカが、30代の半ばくらいの頃、カフカのことを慕う孤独な青年グスタフ・ヤノーホとの対話の一節。

そこでカフカは機械文明の行く末を、遠い未来の空想小説ではなく、今、「もうすでに始まっていること」として世界を眺めている。

カフカは私を遮った。「工場は利益を増やすための施設にすぎません。そこでわれわれすべての演ずる役割は従属的な役割にすぎません。一番重要なのはお金と機械なのです。人間はせいぜい資本拡大のための古風な道具であり、歴史の残り滓であって、その科学的に見て不十分な能力は、間もなく何の抵抗もなしに、物を考える自動機械によって代用されることになるでしょう。

私は蔑むような溜息をついた。「ああ成程ね、H・G・ウェールズ好みの空想ですね」

「いや」とカフカは厳しい声で言った。「これはユートピアではありません。現にいまわれわれの目の前にのし上がって来る未来の姿そのものです」

『カフカとの対話 ─── 手記と追想』グスタフ・ヤノーホ著

ヤノーホの ‘蔑むような溜息’ というのが、こうした危機意識は常に鋭敏な感性によって指摘され、そのたびに、‘ 蔑むような溜息 ’ によってかき消されてきたことを物語っている。

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2017-02-02 | Posted in 作家の言葉