八木重吉の手紙と「自然」  八木重吉 | コップのお話 〜コップの水が溢れるように〜
 

作家の言葉

八木重吉の手紙と「自然」  八木重吉

 
Glass Story

 

僕は「自然」といふものに、貯らない、愛着を感じます。富ちゃんは如何?

しかし、此頃は、余り、富ちゃんのことばっかりに夢中になってゐるので、「自然」そのものの中に「富ちゃん」を感ずる様になりました。不思議ですね。

あるひは、富ちゃんを恋してから初めて「自然」の実相が解って来たとも考へられます。

畢竟するに、「自然」も、「人」なのですから。

偏在する「宇宙の心」は、やはり「人の心」と二にして一であると信ぜられます。一木一草に、ある、懐かしい懐かしい感を起し、そぞろに涙をさそわるるのは、すでに、奇しき天然の妙絶なる造化にチャームされたのです。

すでに、すでに、「自然の心」と「わが心」とが相通じ、相抱いたのです。

詩人が、自然を謳うとき、画家が、パレットの上から、キャンヴァスの上に、その生々しい絵の具をうつすとき、彼等は、まったく神人冥合の境地にあると云へるでせう。

万物は「宇宙の心」の表現であると思はれます。

『八木重吉全集第3巻』八木重吉著

 

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2017-02-19 | Posted in 作家の言葉