外国人お笑い芸人が語る、海外と比較した「日本のお笑いの特徴」 | コップのお話
 

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外国人お笑い芸人が語る、海外と比較した「日本のお笑いの特徴」

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縦棒 日本のお笑いが世界一面白い理由とは

よく海外と比較して日本人はユーモアが足りない、面白くない、などと言われる。

政治風刺もせず、空気の読み合いに終始した日本のお笑いは「オワコン」だと批判した脳科学者もいた。

一方で、日本のお笑いを擁護する声もある。

日本のお笑いの特徴や、海外と比較して世界一面白いと語るのが、外国人(オーストラリア人)で日本のお笑い芸人になったチャド・マレーンさんである。

チャドさんが、先日、《「日本のお笑い」が世界最強である3つの理由」》というだいぶそそるタイトルの記事を挙げていたので、この内容を踏まえて解説したいと思う。

 

チャドさんは、オーストラリア生まれで、15歳のときに日本のお笑いと出会い、「海外のコメディアンよりずっと面白い」「日本で売れたら世界制覇できる」と思い立って18歳で単身来日。

吉本お笑い養成所(NSC)に入り、ぼんちおさむに弟子入りする。

その後、日本の様々なお笑いコンテンツの英訳なども行なったことから、日本のお笑いの海外輸出について考えるようになったと語る。

僕は日本のお笑いを海外に輸出することについてつねづね考えてきました。コンテンツとして考えた場合、日本のお笑いは世界制覇するほどのポテンシャルがたっぷりあると思ってます――僕自身のことはさておきながら。

出典 : 「日本のお笑い」が世界最強である3つの理由」|東洋経済ONLINE

そのチャドさんが、日本のお笑いが世界一面白いと思う理由は、以下の四つ(タイトルは三つとありますが、読み進めていくと四つありました)だと言う。

それは、「圧倒的に芸人が多いこと」「チームプレイが巧みで空気を読むこと」「政治風刺や下ネタなどお決まりのお題を使わないこと」そして、「ツッコミの存在」である。

どういうことか、チャドさんの意見を参照しながら、日本のお笑いの特徴について、順を追って解説していきたいと思う。

 

縦棒 日本のお笑いの特徴1、芸人の数が多い

日本には圧倒的な数の芸人がいること。「数で勝負かい!」とツッコミが入るかもしれませんが、ブラジルはサッカーが強いのと同じ理屈で、お笑いに人生を賭ける人数が多いほど必然的にレベルが高くなるということはうなずけるかと思います。

お笑い専門の劇場もあちこちにあり、お笑い番組も多く、海外と比べてものすごくハードな競争が繰り広げられているのです。

出典 : 「日本のお笑い」が世界最強である3つの理由」|東洋経済ONLINE

ブラジル人がサッカーが強い要因の一つに、子供の頃から遊びでサッカーに慣れ親しんでいる、ということが挙げられる。日本、特に大阪など関西地方は、言うなればお笑いのブラジルである。

日常の会話ですぐにボケとツッコミが繰り広げられる。

暗い人、明るい人、というのはもちろんあるが、全く面白くない、というのは珍しいと思う。

それは、日頃から、その「球技」に触れているので基本の「身のこなし方」が肌感覚的にわかっていると言うのもあるだろうし、そもそも「関西弁」そのものに面白さが含まれている。

世界中にそんな地域や言語って存在しないと僕は思う。

あの地域のひとは(「テンションが高い」ではなく)笑いに長けている、あるいは方言に面白さを助長する要素がある、といった地域はちょっと他に想像ができない。

 

 

縦棒 日本のお笑いの特徴2、チームプレイが巧みで空気を読める

よく、日本人は空気を読むと言われますが、空気を読めるからこそ、巧みに笑いを取れることもあるのです。それと関連して、日本では、トークやコント、歌などを組み合わせたバラエティ番組が多く、多様な出演者が並ぶ中でうまく立ち回ったり、誰かをフォローしたり盛り上げなくてはなりません。いわば「チームプレイ」の力。

出典 : 「日本のお笑い」が世界最強である3つの理由」|東洋経済ONLINE

空気を読むという感覚は外国人には分からないと言い、空気を読むのが日本人の弱点のように語られることも多い。

しかし、空気を読む、というのは普通に考えて凄いことである。海の風を読む漁師みたいなものだろう。

空気は読まなくてもいいんだ、と豪語するひとに、そもそも空気をちゃんと読めているひとはいるのだろうか。逆に、「空気を読めよ」と押し付けてくるひとにも読めているひとはいない。

酒の席で無茶振りして口先を尖らせて「空気を読めよ〜」と茶化すひとの空気の読めなさに苦しめられたひとも多いのではないだろうか。

実は、そういうひとの大抵は「空気を読む」ことと「前例に従う」ことをごっちゃにしている。

空気というのは刻一刻と変化する。また、空気を読めないひとの吐き出す息も引っくるめての空気である。

空気に境界線なんてないのだ。

だから、ほんとうに空気を読めるひとは素晴らしいと思うし、空気に合わせて舞い踊ることのできるひとは凄まじいのである。

 

 

縦棒 日本のお笑いの特徴3、政治風刺や下ネタなどお決まりのお題を使わないこと

僕が思う海外のお笑いの4大テーマは「政治」「宗教」「人種」、そして「下ネタ」と言っていいでしょう。対して日本のお笑いは、それらを避ける傾向にあることです。それを海外の人にいうと、みんなが驚きます。「一体なにで笑いを取るねん?」と。

出典 : 「日本のお笑い」が世界最強である3つの理由」|東洋経済ONLINE

こうしたテーマを海外の笑いが扱うのは、それが手っ取り早いからだとチャドさんは言う。

観客はコメディアンの発する「あるあるネタ」で、日常に溜まっていた鬱憤を晴らすことができる。

加えると、日本人は白と黒という対立構造(二元論)を嫌う。それよりも、調和を重んじるというのが文化的な特徴として挙げられる。

一方で、西洋は二元論の文化。ディベートもロックンロールも、二元論が根底にある。

日本では、むしろ、その二つの対立がふっと消え去る瞬間の〈内的爆発〉によって笑いが生じる。

それは、最後の理由である「ツッコミ」の存在とも関わってくる。

 

 

縦棒 日本のお笑いの特徴4、ツッコミの存在

日本のお笑いが爆笑を誘うのには、日本独特の「ツッコミ」が果たす役割も大きいと思います。海外のコメディアンたちは、サラッと面白いことを言ったり、粋な感じでひねくれたことを言ったりしますので、クスッと笑うことはできても、爆笑はできません。

出典 : 「日本のお笑い」が世界最強である3つの理由」|東洋経済ONLINE

僕がよく海外に行ってきたひとに尋ねるのは、「ツッコミ」ってある? である。

今のところどこにもツッコミはない。しかも、上手い下手は別として、日本ではツッコミを大抵のひとがする。

ツッコミと言うと「なんでやねん」と叩くだけだと思われるかもしれないが、優しく訂正をしたり、ツッコミをすると見せかけてスカす、など色んなバリエーションの「ツッコミ」がある。

広い意味の「リアクション」である。

このツッコミも、二つの対立を消す効果がある。二つで一つになる、と言ってもいいかもしれない。

海外の笑いは、誰か主体が存在し、「面白いことを言う」のに対し、日本のお笑いは二つで一つになる、あるいは全体で一つになる。

そしてまたばらばらに散らばって、再び一つになって、ということを繰り返す。

二つで一つというのは合気道がそうであり、ツッコミを誘発するのは余白や「間」の文化とも通底する。

脳は、差し出された小さな空の器に、反射的に「答」を入れるという傾向を持っている。

『白』原研哉著

これは、無印良品の総合デザインを担当するデザイナーの原研哉さんが、『白』という日本の文化に根ざした感受性について綴った本の一節である。

この「空の器」のつくりかたが、日本人は巧みであり、「答」を入れるというのも反射的なツッコミとして行っているのである。

そして、その刹那「一つ」になって爆笑が生じる(今から約10年前には、原研哉さんと爆笑問題のお二人が対談して、日本の「間」や「空っぽ」について話している)。

 

 

以上、四つの理由を見ながら、日本のお笑いの特徴を紹介してきた。

ご覧の通り、根本的に「ユーモア」と「お笑い」は違う。

しかし、こういうことは説明したら面白くないし、ハードルが上がるので言わない。

そうすると、遠くから誰かが、日本のお笑いはオワコンだとか世界と比較して遅れているとか、違う尺度からのみ論じて罰するという話になる。

合わせる必要は全然ないと僕は思う。

むしろ、OWARAIやTUKKOMI、「空気を読む」を深め、広めたほうがいい。世界中のあらゆる言語圏で突っ込んで対立項が一瞬消える連鎖が生まれたら、世界はきっと今より平和になる。

世界一というのは大袈裟かもしれないが、こういう「お笑い」もあってもいいのではないだろうか。

圧倒的な数を誇る芸人人口と、多種多様なテイストのお笑いの上に成り立つ一大文化を、日本の皆さんはもっと誇るべきですし、これからの進化にも期待を持っていただいていいと思います。

みんなで、いっぱい笑おう。

出典 : 「日本のお笑い」が世界最強である3つの理由」|東洋経済ONLINE

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2018-01-18 | Posted in 文学と芸術