無印良品と環境問題 〜いちばん最初の商品から考える、無印良品の哲学〜 | コップのお話
 

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無印良品と環境問題 〜いちばん最初の商品から考える、無印良品の哲学〜

 
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縦棒  無印良品とは

今や日用品からファッション、家具家電まであらゆるジャンルを網羅し、世界的なブランドとなった無印良品(MUJI)。

アジア圏では高品質でシンプルな生活用品として、欧米では「禅的」な思想を生活で実践するブランドとして熱いファン層を確立しています。

無印良品と言うと、「安心」、「信頼」、「温もり」といった穏やかなブランドイメージを持つ方も多いかもしれません。

しかし、そもそも無印良品の哲学には、世の流れに対するアンチテーゼの精神がありました。

無印良品の起源は、今から約40年前の1980年のこと。

当時、世相は高度成長期からバブル前夜の浮き足立った空気、派手な服やブランドが溢れた時代。そのアンチテーゼとして、ブランド(印)に頼らない、質で勝負する「無印良品」が、西友のPBとして始まりました。

無印良品(MUJI)は、時代のアンチテーゼとして誕生した。バブルへと向かう消費社会の真っただ中だった1980年、西友のプライベートブランド(PB)としてスタートした。

当時の日本は、個性あるデザインや柄、ブランドの「印」を付けた商品にあふれていた。そのような時代に、ブランドの「印」に頼らないで、「商品そのもの」の良さを訴求した商品シリーズとしてMUJIは誕生した。

出典 : 無印良品の独自性を生み出した「アンチテーゼ」

また、無印良品は、無印であること以外にもう一つのブランド哲学として、「これでいい」という言葉を掲げています。

あれ「が」いい、これ「が」いい、というのではなく、しかし、だからと言って怠惰な諦めでもなく、美しく、理知的な「これでいい」。

その選択肢として、無印良品はありたい、と。

その「これでいい」の感性が日常に浸透していくことで、環境問題など今ある諸問題も少しずつ解消されていくのではないか、という願いが無印良品には込められているのです。

以下は、公式サイトに掲載された「メッセージ」の一部です。

無印良品の商品の特徴は簡潔であることです。極めて合理的な生産工程から生まれる製品はとてもシンプルですが、これはスタイルとしてのミニマリズムではありません。それは空の器のようなもの。つまり単純であり空白であるからこそ、あらゆる人々の思いを受け入れられる究極の自在性がそこに生まれるのです。

省資源、低価格、シンプル、アノニマス(匿名性)、自然志向など、いただく評価は様々ですが、いずれに偏ることなく、しかしそのすべてに向き合って無印良品は存在していたいと思います。

出典 : 無印良品の未来

その意味では、欧米の「禅的」という評価も、あながち間違いではないと言えるでしょう。

 

縦棒  無印良品のいちばん最初の商品

ところで、無印良品のいちばん最初の商品をご存知でしょうか。

まだプライベートブランド時代の1980年に販売された最初の商品は、「われ椎茸」と「鮭水煮」です。

 

 

干し椎茸は生のしいたけと比べ、旨味や香りも強く、味や栄養価にも優れ、風味豊かな出汁(ダシ)としても活用できます。

しかし、日常的に料理に使う人は減っていました。

その理由の一つが、価格でした。

この「干し椎茸は高い」という常識をくつがえし、お手頃な干し椎茸を提供したのが、無印良品の「われ椎茸」でした。

なぜ安いかと言うと、形や見栄えにとらわれずに、本来なら使われない不揃いのものや割れた椎茸も活用することで、その選別工程をカット。価格を抑えることができたのです。

広告コピーは、「割れ椎茸が、笑った」。

これまでの通念からすればネガティブな側面である「割れている」という部分に光を当て、「笑った」と表現する詩のようなコピーです。

 

鮭水煮は、鮭の缶詰です。

一般的な鮭の缶詰は、綺麗に見えるように形の整った胴体部分だけを使用していました。鮭は頭やしっぽにも美味しい身がついているのですが、フレーク状になって見栄えが悪くなるので、使える部分でも捨てられていました。

でも、実際に食べるときには、チャーハンから和え物までほぐして使うことも多く、結局はフレーク状になる。

だったら、ということで、無印良品の鮭水煮は、製造時に頭から尾っぽまでほぐして最初からフレーク状にして販売しました。

その結果、捨ててしまっていた部分も活かせ、コストカットにも繋がったのでした。

体裁にとらわれることなく、素材を無駄なく使う。実用を重視して、無駄な選別をしない。この缶詰で培われたものづくりの考え方は、その後の無印良品の指針になり、多くの商品の開発につながっていきました。

出典 : 無印良品「鮭水煮」

この鮭水煮の広告コピーは、「しゃけは全身しゃけなんだ。」です。

 

 

当たり前のことなのかもしれませんが、シンプルながらこれまでの見え方を一新させ、はっと気づかせる素敵なコピーですね。

こうした最初の商品から続く無印良品の哲学は、今も連綿と受け継がれています。

 

縦棒  最近の二つの動き

もともとは干し椎茸と鮭の缶詰というこじんまりとした二つの商品から始まった無印良品ですが、今ではご存知の通り日常のいたるところに無印が浸透しています。

そして、ここ最近で注目したい二つの動きが、「団地リノベーション」と「道の駅(風)」です。

一つずつ紹介します。

まず、「団地リノベーション」ですが、無印良品はUR(都市再生機構)と組んで団地を無印良品の家具を使ったリノベーションで再生させる、というプロジェクトを行なっています。

公営団地のスタイルは戦後に普及し、当初は近代的な住空間として憧れの的でした。

しかし、時代とともに老朽化や住人の高齢化、人口減少など特に郊外団地について様々な課題も浮き彫りになってきました。

そこでもう一度「若返り」を図るために、URが無印良品と提携し、リノベーションを行なって子育て世代の若者たちを集めようと考えたのでした。

画像 : MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト【香里団地(大阪府枚方市)】

郊外の団地というある意味で「捨てられる」かもしれない場所に光を当て、もう一度蘇らせようというのは、まさに無印良品的な着眼点と言えるでしょう。

ちなみに、この無印良品的という言葉についてクリエイターの深澤徳さんは著書『思想としての「無印良品」』のなかで次のように綴っています。

私が取材した折には、例えばある品物が「無印良品」的であるかないかを、社員の誰もが即座に判断できることに驚かされた。

『思想としての「無印良品」』深澤徳著

これは無印良品の社員が、自社の哲学や美意識、判断のものさしを共有しているということなのでしょう。

 

もう一つ現在手がけているのが、「道の駅」です(正確には国交相に登録された公式の「道の駅」ではないので、「道の駅(風)」)。

無印良品の母体である良品計画は、今年4月新たに千葉県鴨川市に「道の駅風」の施設「里のMUJIみんなみの里」を開きました。

この「みんなみの里」は、生活雑貨を販売する無印良品と、地元の農産物や土産物を扱う直売所、その農産物を使った料理を提供するMUJI CAFE、そして開発工房が連なる複合施設です。

画像 : みんなみの里|無印良品

規格外で捨てられる農作物も含め、地元の生産者の食材が、無印良品の世界観を通した加工品として生まれ変わり、またその製造業者の多くも鴨川の企業だそうです。

商品は、良品計画のバイヤーが探して回ったり、業者にこんな商品をつくりませんか、と提案します。

また今後は、ここ「みんなみの里」の「開発工房」で、地元産の食材を使った独自商品も開発していく予定だと言います。

こうして地元の農家や企業とも協力しながら、互いに補い合い、高め合うことで、よい循環が生まれていきます(地元にお金が入り、雇用にも繋がるでしょう)。

道の駅は、この20年で、その数約10倍に増えています。

道の駅の設置に当たっては、公共トイレや休憩場所の確保といった程度で、それほど厳しい基準は設けられていません。また運営は市町村に委ねられています。

そのため、力を入れている自治体もあれば、手の回っていない地域もあり、素材を活かしきれていない現状もあるようです。

道の駅のある地域には、おいしくて、「もっと加工したり、手を加えたりすればヒット商品に育つのではないか」と思われるような“埋もれた特産品”が数多くある。商品政策や運営を改善すれば、「一段と利益が上がるのではないか」と見られる施設も少なくないのだ。

出典 : 無印良品が千葉で「道の駅」風施設の運営を始めた理由

店舗内のデザインや音楽だけでなく、こうした試みそのものに、無印良品の「われ椎茸」や「鮭水煮」に通ずる哲学が感じられます。

この無印スタイルは、日本だけでなく、海外でも応用が可能であり、そのスタイルやデザイン性と一緒に思想も輸出(適用)することができます。

また一朝一夕では「パクる」ことができない、というのも大きな強みです(たとえ無印良品の「ロゴ」をパクっても、本質的な価値はそこにはないので「次の一手」が打てません)。

無印良品は、急激な成長は見込めなくとも、今後着実に生活のインフラ的な存在として、世界でも価値を高めていくことでしょう。

 

ちなみに、無印良品について深く知りたい場合におすすめの書籍として、トータルのデザインを担当する原研哉さんの『デザインのデザイン』や『』。

また無印良品のコンセプトブックである古今東西の名言や写真、絵が組み合わさった『素手時然』。

歴史を振り返りながら、その哲学、思想の面で分析した本として、途中の引用でも使った深澤徳さんの『思想としての「無印良品」』などもおすすめです。

 

デザインのデザイン

デザインのデザイン / 原研哉

 

思想としての「無印良品」- 時代と消費と日本と-

思想としての「無印良品」- 時代と消費と日本と- / 深澤徳

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2018-05-27 | Posted in 社会とビジネス