宮崎駿と砂田麻美 − スタジオ・ジブリのドキュメンタリー『夢と狂気の王国』の感想 | コップのお話
 

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宮崎駿と砂田麻美 − スタジオ・ジブリのドキュメンタリー『夢と狂気の王国』の感想

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Glass Story
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縦棒  砂田麻美の世界観

スタジオ・ジブリのドキュメンタリー映画『夢と狂気の王国』を鑑賞した。

美しい光の演出と高木正勝さんの軽やかな音楽、そしてジブリの神秘性が入り混じった不思議な作品。

ドキュメンタリーに定評のある是枝裕和さんや、映像美と独特の空虚な音楽で心の襞を描く岩井俊二さんの現場で経験を積んだ、若手の砂田麻美さんが監督で、決して直接的な描写で狂気を描くのではなく、余白からほんのりと漂ってくる。過剰な説明はなく、さらっと零れるような余韻が残る。

まさに二人の巨匠の魅力を掛け合わせたような美しいドキュメンタリー映画。

正しく「情報」を切りとるといったタイプのドキュメンタリーではなく、「スタジオ・ジブリ」という被写体を、まるで印象派の絵画のように、彼女の目にした心象風景を頼りに描いた「作品」だった。

内容については、テレビでじゅうぶんという声もあるが、テレビでは踏み込めない、一人の芸術家としての宮崎駿を表現できていると僕は思う。

 

 

縦棒  夢と狂気の王さま

幾つか、印象に残っている場面を ─── 。

 

ジブリの将来について撮影者からレンズ越しに尋ねられたとき、宮崎監督は、はっきりとした口調で言った。

ジブリには未来はないですよ、と。でも、どうしようもないんです。いつか消える、それでいいんです。

そして、「ジブリは、固有名詞だからね」と呟くと、「きれいだ」と子供のように庭に咲く草花のほうに歩いていった。

 

また、夜、家路を歩きながら、睡眠薬を飲んでいる、と語っていた。

彼は、「寝られるわけがないじゃん」と言い、ため息を繰り返す。「ぼくは、躁鬱が激しいんですよ」

今日は立ち直ろう。明日はもう少し描けるはず。ぶつぶつと独り言のようにそう呟きながら、夜道を歩いていく。

 

ときには、「もういいんです」とやけっぱちのように吐き捨て、焼け野原になればいいんだ、とうそぶくこともある。

ところが、次の瞬間には、窓の向こうに広がる東京の町並を眺めながら、その天真爛漫な想像力を巡らせ、空想の世界にひたる。

あの屋根から屋根に飛び移ったらどうだろう。電線の上を走れたら、どこへだって行ける。

そんな風に、想像の世界に声を弾ませるのだった。

 

宮崎さんは、「人類の夢はね、みんな呪われた夢なんですよ」と言う。

だから、目の前に広がる風景が、絶望の景色と表裏一体なのだと知っている。全部、何もかも消えてしまえ、と思うこともある。

それでも、未来を全面に湛えた子どもたちの笑顔を目にすると、きゃっきゃっという甲高い声を耳にすると、また、抑えがたい「希望」が沸き上がってくる。

希望と絶望を、夢と狂気を、揺り戻しのように激しく往来する。

スタジオ・ジブリという、歴史に残るだろう不思議の王国と、嘘を着飾ることのない、それゆえに剥き出しで、今にも引き裂かれそうな、夢と狂気の王さまの話。

 

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2014-05-31 | Posted in 文学と芸術

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