こころ
かすかなひとすじ 語源で見る、「かなしみ」と「愛し」のこころ

Glass Story
泣き虫
若い頃はよく泣いていました。
学校に行けなかった中学や高校の頃、毎晩のように得体の知れない何かが怖くて薄暗い部屋で泣いていた。
大学に入って上京してからは、その涙の理由に、くっきりと人の影が現れるようになりました。
当時付き合っていた彼女が涙ながらに告白した過去に、二人で一緒に泣いたこともありました。玄関先で泣き崩れ、別れのときも泣きました。激しい雷雨の下、どうすることもできずに、ただアスファルトに立ち尽くして泣きはらしたこともありました。
当時高校生だった弟が、夏休みに初めて実家に付き合っている女の子を連れてきたときも、帰り際に並んで自転車で去っていく、彼らの遠ざかる後ろ姿を玄関から眺めながら涙ぐんでいました。
何を泣いてるのよ、と横で母が笑い、「だって」と僕は言いました。「時間は、過ぎていくから」
年寄りくさいよ、と母はもう一度笑いながら僕の肩をぽんぽんと叩きました。
かなしみで繋がる
ちょうどその頃に出会ったのが、『「かなしみ」の哲学 − 日本精神史の源をさぐる − 』という本でした。
赤い帯に、白く、「わたしたちはどのように世界とつながるのか」と見出しがありました。
これは、長い長い歴史のなかで、日本人がどのように「かなしみ」と向き合ってきたか、ということが書かれ、宮沢賢治、国木田独歩、八木重吉、西田幾多郎といった詩人や哲学者、あるいは古い和歌などから、日本の「かなしみ」について探っていく本です。
そして、孤立してしまった僕たちが、「かなしみ」によって繋がる方法を模索していきます。
僕は、宗教で〈繋がっている〉という状態には、どうしても馴染むことができませんでした。
宗教は幼い頃から身近にあり、少なくとも僕にとっては、それは、むしろ僕自身の悲しみの一つの源泉になっているようにさえ思えたのです。
ときに宗教が断絶を生んでいる様も見てきました。
だから、この「かなしみ」によって繋がる、という考え方に僕は共感を覚えたのでした。
かなしみの語源
悲しみ、やまと言葉の「かなし」の語源は、「しかねる」という否定形である、と著者は紹介します。
この「かなし」には、力が及ばないどうしようもなさ、大切な存在を失ったときの無力感が根底にあります。
こうした感情を、日本人は決して忌み嫌うものと捉えるのではなく、「幽玄」や「わび・さび」「無常観」のように美的に表現してきました。
弟たちの去っていく後ろ姿に込み上げたものも、その「かなしみ」だったのかもしれません。必ず去っていく〈時間〉と、その二人が遠ざかっていく光景が重なったのでしょう。
また、「愛し(かなし)」の根っこにも、この「しかねる」があるそうです。
どれほど手を伸ばしても決して届かない、無力感にも似た、切なくなるような、愛おしさ。
愛が失われることで悲しくなるのではなく、愛そのものが、すでに、決して触れられない「かなしみ」を帯びているのです。
こうした「かなしみ」との付き合い方は、この地に宿命的な、地震や噴火といった天災と深く連動しているのだと僕は思います。
諸行無常の響きは、もしかしたら、仏教や文字の伝来よりも遥か昔から、僕たちの無意識の奥深くで響き続けていたのではないでしょうか。
世の中は 空しきものと 知るときし いよよますます かなしかりけれ
大伴旅人
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。娑羅双樹の花の色。
盛者必衰のことはりをあらわす。おごれる人も久しからず、ただ春の夢のごとし。
平家物語
このかなしみを
よし とうべなうとき
そこにたちまち ひかりがうまれる
ぜつぼうと すくいの
はかないまでのかすかなひとすじ
八木重吉
どうして僕はこんなにかなしいのだろう。僕はもっとこころもちをきれいに大きくもたなければいけない。あすこの岸のずうっと向こうにまるでけむりのような小さな青い火が見える。
あれはほんとうにしずかでつめたい。僕はあれをよく見てこころもちをしずめるんだ。
銀河鉄道の夜
かつて、アメリカ人の紀行作家であるアン・リンドバーグは、「サヨナラほど美しい言葉をわたしは知らない」という言葉を残したそうです。
サヨナラ、さようなら。この言葉の語源は、「さようならば」「さようであるならば」、「そうであらねばならないのなら」という接続詞です。
無力感に立ち尽くす他にない現実を前に、引き裂かれるような別れや悲しみを前に、「さようであるならば」と手を振る。
かなしみで繋ぐ
僕たちは、こうして「かなしみ」を、「かなしみ」として受けとめてきた。共存してきた。
透明の涙を流しながら、「よし」とうべなって、微かな一筋を繋いできたのです。
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