小さな革命 − 小学校の運動会のスローガン | コップのお話
 

社会とビジネス

小さな革命 − 小学校の運動会のスローガン

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Glass Story
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小学校六年生の頃、運動会のスローガンを決める話し合いがクラスで開かれた。

システムはきわめて民主的で、まず班ごとに自分たちの考えたスローガンを発表する。

クラスには六つの班があったので、六つの案が出る。

そこで各々の班がプレゼンし、一回目の多数決で二つに絞り、最終プレゼンと二回目の多数決でクラスの案が決定する、というものだった(そして各委員長がクラス代表を持ち寄って最終案が決まる)。

 

毎年似たようなフレーズが屋上から垂れ下がっているのを知っていた僕たちの班は、一風変わったスローガンにしようと目論んだ。

それは「暴れろ三色、優勝奪え」という若干の珍味だった。

あくまで既存のルールを尊重した上で、少々の味付けを加えたスローガンだ(確か僕はもう少しエッジを効かせたかったのだが、友人にたしなめられた)。

漫画家の水木しげるが学校集会のときわざと「屁」をして笑わせたように、男の子は、こういう権力がざわつく空気が大好物なのだ。

僕は班長だったので発表し、プレゼンをした。

当初、クラスメイトだけでなく若い男の担任の先生も笑っていた。

ひとまず第一段階はクリアだ。しかし、出落ちで終わるわけにはいかない、勝負はここからだ、と僕は思った。

発表の順番が最後だったのも功を奏したのだろう。ぎらぎらと目を輝かせたクラスメイトが、僕たちの意見を支持し、二番目の票を獲得した。

流れは完全に僕たちの「暴れろ三色、優勝奪え」にあった。

僕は、屋上から風に舞って落ちてくる横断幕に書かれた、「暴れろ三色、優勝奪え」という文字と、保護者たちのとまどいの空気を想像して、こそばゆく、堪らない気持ちになった。

 

ところが、である。

ずっと黙って進行役に徹していた30歳前後の担任(爽やかで、人気もあった)が、突然、「君たち、本気でいいのか」といったニュアンスでプレゼンに参入してきた。

夢の狂宴は、しんと静まり返るように冷静さを取り戻した。

あのときの若い担任の目つきは忘れられない。困惑と、そして真剣な「大人」の目だった。

大人が出てきた! と子供ながらに僕は思った。

 

結局、見事に惨敗した。僕たちの案に投票したのは、班員と、あと数人の熱心な支援者だけだった。

そして無難なスローガンが校舎を覆い、無難な運動会が幕を閉じた。もはやどんな言葉だったのかも覚えていない。

僕が覚えているのは、ただ、彼らにとっての何かが揺らぎそうなときに慌てて全力で守ろうとする「大人」の目つきだけだった。
 

そう、もし本気で何かを変えたいと思ったら、勢いだけじゃだめなのだ。



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2016-06-04 | Posted in 社会とビジネス

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