からだと自然
ヒアリの死亡率 デング熱やマムシとの比較から、ヒアリの危険性を考える

Glass Story
ヒアリ、上陸
中国から神戸港に運ばれてきたコンテナで、毒性の強いヒアリが見つかった、と少し前から騒ぎになっています。
各ニュースで、「殺人アリが上陸」とセンセーショナルに報道され、その影響から殺虫剤の売れ行きがよくなるだろうと見込んだのか、「フマキラー」の株価が30年ぶりに最高値を更新しました。
驚いたのが、「大阪港で二匹の女王アリを発見」という太字の見出し。
ヒアリってそんなに怖いのか、「騒ぎすぎ」じゃないのか、というのが率直な疑問であり感想でした。
そこで、このヒアリに刺されたときの症状や死亡率などから見た、ヒアリの危険性について考えてみたいと思います。
ヒアリの症状と死亡率
ヒアリは、漢字表記で「火蟻」と書き、文字通り赤茶色をしています。
原産は南米で、次第にアメリカ、カリブ海の島々、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、中国などに拡大していきました。
お尻に毒針を持ち、刺されたときの症状として、激しい痛みやかゆみ、また半日もすると膿が出てくることもあります。
重症のケースではアナフィラキシー・ショックを起こし、刺されてから数十分で、じんましんや息苦しさ、呼吸困難やめまいなどの症状が出ます。
そして最悪の場合、死に至るケースもある、と。
こう書くと、やっぱり危険じゃないか、と心配になるかもしれませんが、症状だけを見れば、それほど蜂と変わりません。
それでは、ヒアリに刺されたときの「死亡率」は、一体どれくらいなのでしょうか。
マスメディアでは、死亡率の報道はほとんどなく、「アメリカで毎年100人がアレルギー・ショックで死亡している」という数字が先行しています。
しかし、この数字の出処はよく分かっていません。
ただ、似たような数字として、米国疫病対策センターは「毎年数千人が昆虫に刺され、そのうち100人ほどが死亡に至っている」という報告をしています。
この数字のみで単純に計算するなら、死亡率は数パーセントと言ったところでしょうか。
これだとずいぶんと高いような気がするのですが、よく見ると、この数字の分母は、「ヒアリ」ではなく「昆虫」の被害者数となっています(この被害者数自体も正直よく分かりません、そもそも「刺されても報告しない人」も相当数いるでしょうから)。
米国疾病対策センターは「米国では毎年何千人もの人々が昆虫に刺され、少なくとも90~100人がアレルギー反応の結果、死亡している」と説明している。この数字はハチなども含めたもののようだ。
神戸市のプレス資料に「米国で毎年100人以上が死亡」という記述はない。担当者は、そうした情報を提供したことはなく、「各社が自分で調べたのではないでしょうか?」と言う。
環境省の資料にもない。「いくつかの数字があって、それらが『年間』なのか『これまで』なのか、私たちも確認できていないのですよ」(環境省外来生物対策室)
死亡率の記述はなかったのですが、万が一刺された場合、ヒアリでアナフィラキシー・ショックを起こす比率というのは、刺されたうちの0、6%〜6%という研究もあるようです。
ただ、そもそも刺される確率自体も少ないでしょうし、アレルギー症状が出たからと言って必ずしも亡くなるわけでもないので、死亡率はこの数字よりもっと少なくなるでしょう。
そして、このことを補完するように、別の記事では、ヒアリに刺されたことで「年間100人死亡」という数字はそのままで、刺された数を「年間1400万人」と具体的に記述している記事もありました。
アメリカでヒアリに刺される人は年間1400万人であり、毎年100人ほどが死亡している。ちなみに、日本でスズメバチに刺されて死亡する人は、年間20人ほど。
数千人(昆虫に刺された数)と、1400万人(ヒアリに刺された数)では、ずいぶんと開きがあるようですが、おそらく前者は実際に「治療を受けた患者数」で、後者はそこから「すべての刺された人数を類推」した数字なのでしょう。
この数字を元に計算すると、ヒアリの死亡率は、約0.000007%です。
デング熱との比較
ところで、この「死亡率」は、他の自然界に生息するリスクと比較して、一体どの程度高いのか、それとも低いのでしょうか。
たとえば、虫自身が持っている毒と、虫を媒介にしたウイルスとでは単純な比較はできませんが、ちょっと前に、これも過剰に騒ぎになった「デング熱」と比較してみたいと思います。
デング熱の症状は、概ね次のようなものでした。
国立感染症研究所によれば、デング熱(デングウイルス)に感染しても、50%〜80%が「不顕性感染(感染しても症状が何も出ないまま終わる)」だと言います。
そして、残りの低い割合で症状を発症した患者の大多数が、「一過性熱性疾患」を発症します。
一過性熱性疾患
感染3 ~7 日後、突然の発熱で始まり、頭痛特に眼窩痛・筋肉痛・関節痛を伴うことが多く、食欲不振、腹痛、便秘を伴うこともある(…….)これらの症状は1 週間程度で消失し、通常後遺症なく回復する。
仰々しい名称が続きますが、要するに、感染してもほぼ問題なく、低い割合で「風邪の諸症状」が生じ、一週間ほどで後遺症なく自然治癒する、というもの。
デング熱の死亡率は、「海外で感染し帰国した人は一九九九年以降、計約千五百人いるが、死亡は一人だった(東京新聞)」ということなので、こちらは約0.0007%となります。
死亡率だけを見れば、ヒアリの危険性は「デング熱の100分の1」ということになります。
ちなみに、毒ヘビの代表格で割とよく見るマムシですが、マムシの毒による死亡率は0、3%〜0、4%程度だと言います。
ただ、これも全ての死因がマムシの毒が原因かどうかは、古いデータと比較してみないと分かりません。
実際はほとんど死亡例がなく、血清を打つ必要がなかったとしても、対策として「何か」をしないで万が一亡くなった場合、裁判で訴えられるリスクがあるので、とりあえず血清を打つ、という医師も多いようです。
ところが、この血清が非常に副作用が強く、血清に対するアレルギー発作の問題もあるので、死因や重症化の原因が一体どちらだったのかは、判断が難しい場合もあるでしょう。
こう考えると、「マムシの毒」だけが原因の死亡率は、もしかしたらもっと少ないかもしれません。
まとめ
デング熱の騒ぎのとき、代々木公園で大規模な「駆除」が行われました。
正直、あれは行政側の「やるだけのことはやった」という免罪符に近い行為だったのではないかと僕は思います。
画像 デング熱、今年も要注意|日本経済新聞 2015、7、30
完全な防護服でウイルスごと「蚊」を殺そうと、殺虫剤を散布している物々しい映像が流布しました。
あの光景を見て、原発事故を想起した人も少なくないかもしれません。
当時、役所のほうに、「あんなに凄い防護服を着て、デング熱はいよいよそんなに危ないのか」という問い合わせの電話があったと言います。
しかし、あの防護服はじつはウイルスから守っていたのではなく、殺虫剤から身を守っていた、というのがこの話のオチでした。
今も、ヒアリを過剰に殺虫しようとして、ヒアリの天敵となる日本にもとからいたアリを殺してしまうことに懸念が持たれています。
過剰な殺菌が逆に病気を増大させるように、過剰な殺虫によって日本のアリが減少するほど、結果としてヒアリの増大を招くことになりかねません。
もちろんヒアリも様々な問題はあるでしょうが、あまりに騒ぎすぎというか、なにかちょっと恐怖や不安の矛先が偏ったり歪んでいるような気がしてなりません。
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