ヒートアイランド
なぜ? 猛暑で東京、大阪、名古屋など都市部のほうが暑い理由
Glass Story
都市部が特に暑いのはなぜ
厳しい猛暑が続く夏ですが、この暑さの傾向を分かりやすく表した図が、先日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって公表されました。
これは衛星「しきさい」によって8月1日午前10時40分頃に観測された地表の表面温度を表した映像です。
赤色が濃くなればなるほど、温度が高い場所となります。
この地図を見ると、明らかに東京や名古屋、大阪などの都市部で温度が高いということが分かります。
表面温度が高いということは、当然体感温度も高く、また夜間も熱がこもっていたということでしょうから、夜も暑い(熱帯夜)ということが言えるでしょう。
一方で、森林地域は日中でも温度はそれほど高くなく、都市部でも大きな公園や緑地の辺りは温度が低い傾向にあるようです。
それでは、一体なぜ都市部がこれほど暑いのでしょうか。
その理由の一つとして、「ヒートアイランド現象」が挙げられます。
都市部が暑い理由「ヒートアイランド現象」とは
ヒートアイランド現象とは、「ヒート(熱)」「アイランド(島)」。すなわち、都市化が原因となって生じる気温の上昇を指す名称です。
これは東京など都市部に住んでいたり夏に滞在した方はお分かりだと思いますが、このヒートアイランド現象によって、体感温度も高く、また夜間もまとわりつくような暑さが引きません。
ヒートアイランド現象を引き起こす主な要因は、以下の四点です。
緑地や水面の減少
都心部では、畑や田んぼなどの緑地が減少し、都内を流れていた河川なども埋め立てられたり、覆いをかぶせられ地中化されたりしました。 緑は、水を吸収し、晴れて気温が高くなると、地面や空気の熱を奪って蒸発します。また、河川の水も蒸発する際に、空気の熱を奪います。 このように、緑地や水面が減ってしまうと、地面や空気の熱が奪われずに、熱がこもったままになってしまいます。
アスファルトやコンクリートに覆われた地面の増大
都心部の地面のほとんどは、アスファルトの道路や、コンクリートでできた建物に覆われています。これらアスファルトやコンクリートは熱をため込 み、なかなか冷めません。真夏に、アスファルトの道路を触って、やけどをしそうになるくらい熱くなっているのを体験した人も多いと思います。
自動車や建物などから出される熱(排熱)の増大
自動車からの排気やエアコンの室外機から出される空気は、夏場はとても近くには立っていられないほど熱くなっています。都内を走行する自動車や家庭やオフィスで使用されるエアコンの台数は増え続け、東京の夏はますます暑くなっています。
ビルの密集による風通しの悪化
ビルなどの建物が密集すると、風の道がさえぎられ、風通りが悪くなり、熱がこもったままになってしまいます。同じ気温でも、風があると体感温度はぐっと涼しくなります。
東京都環境局によれば、ヒートアイランド現象の原因として、「緑地の減少」や「アスファルトの増大」「排気やエアコンの多用」「ビルの密集」の四点が挙げられます。
猛暑の原因は「温暖化現象」という声もありますが、この「ヒートアイランド現象」も深刻な問題だと言えるでしょう(しかし、後者は人間によって変えられる部分でもあります)。
20世紀のあいだに地球の平均気温は0、6℃上昇しました。
しかし、日本は平均気温は1℃上昇し、特に都市部では2〜3℃上昇しています。
こうした数字を見ても、また熱中症の増加傾向を見ても、ヒートアイランドの影響の強さがわかると思います。
ヒートアイランドが与える様々な影響と対策
なぜ東京や名古屋、大阪などの都市部がいっそう「暑い」のか。
そこには、こうしたある種の「人災」が関係していたのです。
ところで、約10年ほど前から、都心部では夜も蝉が鳴くようになりました。
これも都会の明るさの他に、ヒートアイランド現象によって夜も気温が下がらないことが原因となっているようです。
また、その頃から問題になり始めたのが、ゲリラ豪雨(2008年流行語)です。
画像 : 第3回 ヒートアイランドが及ぼす影響とは?| NHK
そして、東京の熱中症患者の激増も、ちょうどその頃から始まっています。
都市部の暑さを「人間の手」によって解消するためには、この「ヒートアイランド現象」の対策が欠かせません。
ヒートアイランド対策としては、先ほど触れた原因となっている四点と向き合い、大規模な緑地化や風の通り道の確保などを行うことが求められるでしょう。
それは都市の「自然」との向き合い方そのものと言えるかもしれません。
自然欠乏症候群 -体と心のその「つらさ」、自然不足が原因です / 山本竜隆