政治と経済
米国大統領候補者選挙 − トランプ旋風は誰がつくったのか
Glass Story
米国の大統領候補者選が話題になっている。
共和党では、過激な発言で知られるドナルド・トランプ氏が選ばれる可能性が、いよいよ現実味を帯びてきた。
トランプ旋風。
不法移民が移動してくるメキシコ国境線に万里の長城のような巨大な壁をつくる。イスラム教徒の入国を禁止する、要するにこれも「壁」をつくるということだろう。
日米安保に対しても批判的な立場だ。
なぜ米軍だけが日本のために血を流す必要があるのか、と言って支持を集める。
たぶん、トランプさんが大統領になったら、日本からの米軍撤退、ないしは「用心棒代」をさらに要求する。
あるいは米軍の流す血や費用を減らすために日本に強硬に「軍事的支援」を求めるようになる(これまでは、「手伝いたいのは山々ですが、憲法が」と言えたけど、こないだの安保法案で「できる」ようになった)。
トランプさんの考え方は、極めてシンプルだ。
米国の損失を減らす。そのための過激な〈対症療法〉をひたすら掲げる。
悪い奴を排除すれば平和になる。嫌な奴とのあいだには壁をつくる。そして最後に「米国の栄光を取り戻せ」と叫ぶ。
このトランプ旋風を、米国の中枢は全く予期していなかったらしく、共和党内でも今必死にトランプ降ろしを画策していると言う。
よくトランプ支持者の中心は「白人貧困層」だと言われる。
元外交官の佐藤優さんは、この層を、分かりやすく「ジャンクフードを片手に、でっぷりと太った中年の白人」と描写する。
この「白人貧困層」は、生活の苦しさに不満を持っている。同時に、精神の拠り所として、国家や人種を誇りにしようとする。
だから、生活苦の不満は、仕事を奪っている「不法移民」の排除に。そして、掲げられる「強い米国」という言葉に彼らは触発される。
共和党のトランプ旋風も、若者の熱烈な支持を受ける民主党候補者選のサンダース旋風も、根っこは一緒だ。
自由経済と、その結果として広がった格差が招いた。
要するに、この「旋風」をつくったのは、これまでの米国政権、そして、「太った白人のおじさん」と対局にある、ジム通いとサプリメントで自己管理を徹底する白人エリート層だ。
こうした Establishment は、あらゆる「ジャンクなもの」を与えることで貧困層を食い物にしてきたし、また未来(若者たち)も食い物にしてきた。
そのしっぺ返しを、それぞれ違った形で食らっているに過ぎない。僕はそう思う。
彼らが「予想外」だと言って慌てふためくということは、結局、自分たちが犯していた罪に無自覚だったということなのだろう。
壁の外に追いやっていたことに気づかなかっただけなのだろう。
外は、次第に肥大化し、内を覆い尽くす。
米国という壮大なフィクションは、没落していくのだろうな、と思う。なんとなく『グレート・ギャツビー』のラストを思い出す。
ギャツビーは緑の灯火を信じていた。年を追うごとに我々の前からどんどん遠のいていく、陶酔に満ちた未来を。それはあのとき我々の手からすり抜けていった。でもまだ大丈夫。明日はもっと速く走ろう。両腕をもっと先まで差し出そう……
そうすればある晴れた朝に__
だからこそ我々は、前へ前へと進み続けるのだ。流れに立ち向かうボートのように、絶え間なく過去へと押し戻されながらも。
このまま行くと、日本も同じ方向に進んでいくだろう。
たとえば10年後、一つの「症状」として、本命と目された小泉進次郎を差し置いて、橋下徹と山本太郎が政権を争う時代が訪れるかもしれない。
向き合わなければいけないのは、ほんとうは今なのだけれども。


