社会とビジネス
母親が娘に牛乳を飲ませ、アレルギーのショック症状を起こさせた“殺人未遂事件”のこと

Glass Story
信じるということ
牛乳アレルギーを持つ長女(5)に牛乳を飲ませ、呼吸困難などのアナフィラキシーショックを起こさせて殺害しようとしたとして、殺人未遂の疑いで同県流山市十太夫、母親の会社員、佐久ちはる容疑者(35)を逮捕した。
調べに「精神状態が不安定だった」と供述し、牛乳を飲ませたことは認めている。
出典 : アナフィラキシーショックで…アレルギーの5歳娘に牛乳 殺人未遂容疑で母逮捕
長女と母親は二人暮らし。被害にあった女の子は、牛乳をのんだ直後呼吸困難などのアナフィラキシーショックに見舞われる。そして、おそらく我に帰った母親が、自ら119番に通報している。
大変痛ましい事件。
女の子は快方に向かっているということで一安心だが、心に負った傷は計り知れない。「口に含む」ということは信頼のなによりの証だ。
どういった形で母親が牛乳を与えたのかはわからないけど、今後、彼女は誰かを信じて、誰かの差しだしたものを「口に含む」ことができるほどに「信じる」ということが可能になるのだろうか。
母親以上に。
愛情
しかし、だからと言って、この問題は、この殺人未遂で捕まった母親を、「虐待するとんでもない親だ」とか「アレルギーに不理解だ」と非難すれば解決するようなものでもないのだろう。
娘と二人暮らし。精神的に不安定だった、と証言する母親。現実感もなく、朦朧とした意識だったかもしれない。午前九時、自宅アパート、アレルギーを持った娘と、パックの牛乳。
愛情というのは、自分と相手が一体になる、ということだ。
そして、母親にとって我が子は、事実一体であった期間を経る。だから、しばらくは「私」と「あなた」の分離が難しく、しかしそれゆえに愛情も深く抱く(と同時に、「授かりもの」の感覚の乏しい現代人にとっては、「所有物」のように感じることも多いだろう)。
ただ、この愛情を抱く、というのは、前提として「母親が自分自身を愛している」ということが挙げられる。自分自身を憎悪しているときは、その憎悪が、一心同体の我が子に向く場合もある。
只でさえ現代社会は、自分と他者(世界)、現実と夢の境界が曖昧になっている。また過剰な情報やストレスは、意識を朦朧とさせ、足場が不安定になる。
心のなかの、「私さえいなければ」という声は、「あなたさえいなければ」とほとんど重複して響く。
だから、きっとこの母親にとっては、殺人未遂であるとともに、自殺未遂でもあったのだ、と僕は思う。
この事件は、アレルギーを抱え、日々苦しんでいる人たちにとっても震撼させる事件だったと思う。
あらためて、「自分を死に至らしめるもの」が容易に手に入る、という事実を突きつけられる。
そして、それが日常的に出回っていて、誰かの悪意やほんの気の迷い、ささいな不注意で、「口に含む」ことがありうるのだ、ということも。
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