こころ
座間、自殺サイト事件に、岩井俊二監督の映画『ヴァンパイア』を連想という声も

Glass Story
座間、自殺サイト事件
神奈川県座間市のアパートの一室で、発端となった八王子の23歳の女性を含め少なくとも九人の遺体が見つかった事件で、白石隆浩容疑者(27)が死体遺棄の疑いで逮捕された。
事件現場となったアパートの玄関にはクーラーボックスがあり、頭部が入っていた。
また警察の捜査によると、室内には大きな箱があり、他に複数の切断された遺体が隠されてあったと言う。
白石容疑者は、無職で、「仕事は決まっている」と周囲に語っていたそうだ。
写真を見るかぎり、とても暗く冷たい眼差しをしている。
ツイッターのアカウント
被害者の八王子の女性と、白石容疑者は、ツイッターや自殺サイトを通じてやりとりをしていたことが分かっている。
白石容疑者本人のツイッターアカウントではないかとして現在ネット上で取り上げられているのが、 @pachi_pachi_kun や、@xlozAtfBHAzN3OZ などで、被害者の女性と思われるアカウントに返信をしている記録も残っている。
また、各マスコミも、(容疑者のものかどうかの確認のため)コンタクトを取ろうとリプライを送っていた。
この容疑者のものと噂されるアカウントの過去のつぶやきを見ると、被害者の女性のように、SNSで「一緒に死んでくれる人を探しています」と発信している人を見つけてはコンタクトを取っているようだった。
被害者と思われる女性のツイート(今は鍵がかかって見れない)。
岩井俊二映画『ヴァンパイア』を連想
まだ、この犯行の動機については本人の供述も乏しく、分かっていない部分も多い。
ただ、「自殺サイト」という事件の性質上、ツイッター上では、映画監督の岩井俊二さんの『ヴァンパイア(2011年)』を連想させる、という声も挙がっている。
神奈川県の殺人事件、岩井俊二監督のヴァンパイア思い出しました
— C-natsu (@1000summers) 2017年10月31日
座間市の事件、ひたすら、岩井俊二監督のヴァンパイア、映画、思い出す
— にわか 極 (@J_I_L_U_D) 2017年10月31日
自殺サイトで〜、って事件。岩井俊二のヴァンパイアみたいな話だ。
— たいがー (@dorarara0818) 2017年10月31日
岩井俊二のヴァンパイア思い出してる人多いね
— ちこ (@MotteMachiko) 2017年10月31日
この映画は、岩井監督が全編英語で脚本を書き、蒼井優さん以外は海外の俳優陣とともに撮影した陰鬱で美しい映像美が特徴の作品である。
そして、作品の一つの重要な設定に「自殺サイト」がある。
作品の概要(『ヴァンパイア』の公式サイトより)。
男はある場所で“ゼリーフィッシュ”と名乗る女(ケイシャ・キャッスル=ヒューズ)と待ち合わせた。見知らぬ者同志、共に死のうとしている。「最後の一日を最高の日にしたい」というゼリーフィッシュに、その男“プルート” (ケヴィン・ゼガ―ズ)は、穏やかに死ねるある特別な方法を試すことを提案する。「血を抜こう」。
この男、サイモン・ウィリアムズは高校の生物学教師で、アルツハイマーの母親ヘルガ(アマンダ・プラマー)との二人暮らし。学校では自殺を考える生徒ミナ(蒼井 優)に「死んではいけない」と説得する誠実な教師を演じているが、プライベートの彼は自殺サイトに接触して、血の提供者を探していた。自殺志願者の間では有名な存在で、“ブラッドスティーラー”または“ヴァンパイア”と呼ばれ恐れられているが、せっかく飲んだ血は後で吐いてしまうし、他の殺人犯が女性を狩る姿を見てパニックになる、気の弱い男でもある。
ある日、サイモンは標的として選んだ“ラピスラズリ”という女性によって思いがけず集団自殺に巻き込まれる。辛くも生き残った“レディバード”(アデレイド・クレメンス)という女性と迷いの森を脱出するが、その道中、自分がヴァンパイアであることを告白してしまう。後日、レディバードはサイモンに血の提供を申し出る。彼女はもう一度自殺したがっていた。そして同じ頃、教え子のミナも自殺を企て、サイモンにとって最も長い一日が始まる(予告編 - Youtube)。
サイモンは、自殺志願者に呼びかけ、彼女たちに苦痛の少ない自殺の方法を教える。それが「血を抜く」という方法だった。
なぜ血を飲みたいのか、という理由は最後まで明かされない。血を飲んでも、すぐに吐き出す。
映画には、残虐なシーンが一部ある。自分もヴァンパイアだ、という男が、ある一般女性(自殺志願者でない女性)を冷酷な手法で殺し、レイプし、血を飲む。
そして、君も仲間だろ、といった態度でサイモンに語りかける。
しかし、サイモンは感情をあらわにして拒絶する。お前のような殺人鬼とは違う、と(どちらかと言うと今回の犯人はこの「殺人鬼」に近いのかもしれない。そしてまたこの拒絶が、狂気を内に秘めた表現者である岩井さんの心の叫びのようにも思える)。
実際に作品を見てもらえれば分かるように、自殺を助長するような映画では全くない。
一方で、やみくもに「生」を歌いあげる作品でもなく、ただ、彼、彼女らの寂しさに寄り添う映画となっている。
寂しさ
テレビでは、自殺は駄目だ、自殺サイトは危険だ、という論調が多い。
そして、実際にそれは「正しい」と僕も思う。
でも、この世界から居場所の失われていく人々が「死」に集まってくるのは、決しておかしなことでも不自然なことでもないし、ただ「駄目だ」と繰り返すのでは余計に孤独になって追い詰められていくのではないだろうか。
昔、岡崎京子の『リバーズ・エッジ(1993年)』という漫画があった(2018年に、岩井俊二監督の元助監督でもあった行定勲監督、二階堂ふみ主演で映画化も決まっている)。
河原で偶然見つけた死体を、精神安定剤のように求めて集まる若者たちの物語である。
生の実感の失われた冷たい社会を生きる若者たちにとって、「死(セックス)」のみが、今を感じることのできる(今から逃れることのできる)唯一の道なのである。
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