上原康樹
NHK盛岡放送局、上原康樹アナウンサーの名文
Glass Story
盛岡の名物アナ上原康樹氏がSNSで話題に
NHK盛岡放送局の上原康樹(うえはらやすき)アナウンサーの口上が美しいとSNSで話題になっています。
上原康樹アナは、1954年生まれ、長野県出身の63歳の男性で、NHKの元シニアアナウンサー。盛岡への赴任を機に岩手の風土に魅せられ、終の住処に選んだそうです。
話題のきっかけとなったのは、ツイッター上での @bazuyasu さんのつぶやきでした。
@bazuyasuさんのお姉さんが、一つのことにはまると徹底する性格で、今はどうやら盛岡放送局の上原康樹アナの言葉遣いに熱中しているらしく、上原アナの口上を熱心に書き写していたと言います。
いつの間にかウチの姉がNHK盛岡放送局上原アナの口上を書き写ししてた。
昔からハマるととことんな姉だったが、相変わらず変わんねーな。
しかし、まぁ上原アナの口上は日本語の奥ゆかしさと美しさが込められていて、詩集が出てもおかしくないレベルなのだよ。 pic.twitter.com/vonUIUXfUL
— bazuyasu (@bazuyasu) 2017年11月18日
上原康樹アナの詩的な描写力はもちろん、盛岡という土地、このお姉さんのパーソナリティや柔らかな手書きの文字も含め、多くの人の心を打ったのでしょう。このツイートは、たった数日で一万件以上のリツイートとなりました。
ここでは、上原康樹アナの名文から、二つほど書き出して引用したいと思います。
残りはつぶやきをクリックすると見れるのでぜひご覧になってみて下さい。どれもお天気「情報」ではなく、匂いや色など、空気感まで伝わってくるような「表現」となっています。
盛岡です。快晴です。
五月の青空に岩手山、雪の印象は遠ざかり、夏の山へ向かっています。
その山麓には濃厚な牧草の緑、菜の花畑の蜜の香り。
そして田園の水鏡に早苗の整列。全ては強い光の中です。
まっすぐ届く太陽の熱を浴びて、今日は予想最高気温が24度の盛岡でした。
岩手県釜石市です。三陸は、朝からしっかり晴れています。
暑さ続きで、例年になく長く感じる夏ですが、7月も20日となればそろそろ夏休み。
日射しの中に子供達の声が響く時期です。
この海の青さや山の緑が絵日記になるかと思うと一時暑さを忘れる三陸釜石の港でした。
上原康樹アナの「表現」
実際にYouTubeに挙がっている動画を見ると、言葉の描写だけでなく、岩手の風景や上原康樹アナの深みのある低い声と相まって、とても印象深い映像となっています。
旅先のホテルでふとテレビをつけたときに聴きたくなるような声でもあり、その声を聴くと別次元の空間にしてくれます。
「北上川が落ち葉を飲み込んで流れています」
明るい気持ちにさせてくれる「そらジロー!!」もいいですが、こういう落ち着いたお天気の伝え方も、懐かしい昭和の声という感じで素敵だなあと思います。
Wikipediaによれば、上原康樹アナは「夕方の気象情報では岩手の風景を題材にし、独特の語り口調で多くの岩手県民から支持されている」とのこと。
ただ、この独特の上原節に、当初は「なんとかしてくれ」という苦情もあったようです。しかし、上司はその苦情を上原アナに伝えませんでした。
天気予報ひとつ読むにも、うれしさがあふれ出た。「今夜は雪」だけではもったいない。「冷えた朝のバスのヒーターなどありがたく」と添えた。「上原節天気予報」の始まりだ。視聴者から「なんとかしてくれ」という苦情もきたが、上司は上原さんの耳に入れないようにしてくれた。
出典 : 天気予報 あふれる東北愛|朝日新聞
盛岡放送局のホームページの上原康樹アナのプロフィール欄に、「自分はどんな人?」という項目があるのですが、「流れる雲のような者」とありました。「者」がいいですね。
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ちなみに、上原アナはツイッターのアカウントも持っており、そこでも淡々と、趣味であるカメラで岩手の風景を収め、雰囲気のある言葉とともに呟いています。
空は暗くなる一方で、街の灯りは増す。
私はといえば、
心を弾ませ写真屋さんへ急いだのである。
(大きく引き伸ばしておきたい夕闇) pic.twitter.com/VQJQtSMjJ7— 上原康樹 (@iwatesanroku) 2017年11月20日
冷気を蹴って、怒涛の風が私の肩をかすめた。
(盛岡三校、いい気合だぜ) pic.twitter.com/Ev2pl6BKi9— 上原康樹 (@iwatesanroku) 2017年11月21日
暗く狭い場所から
発信されている明日の空が
秋晴れだったりする。 pic.twitter.com/rpS8iw9VVa— 上原康樹 (@iwatesanroku) 2017年10月6日
「まずは」「おしまいに」「ここまで」
私は使いません。呼吸でニュアンスをにじませればよい。
1秒に拘り、全体を引き締めます。— 上原康樹 (@iwatesanroku) 2017年10月27日
視聴者の皮膚感覚。
それを知り尽くした天気予報は、
放送する者もまた、
徹底的に土地の人間として生きていなくちゃ。
(歳月は宝だ)— 上原康樹 (@iwatesanroku) 2017年11月16日
天気や季節の移ろいを伝えるお天気キャスターは、本来もっとも詩人に近い存在のひとつなのかもしれません。